ビロードの口づけ 獣の森編
身支度を調えるためにジンは寝室を出て行く。
寝室に服は置いてないらしい。
思い起こせば、ジンは眠る時いつも獣姿に戻っていた。
「今は時期が時期だからな。ミユのように勘違いする奴がいたら面倒だ」
そう言ってジンは、黒い獣になって部屋を後にした。
軽く頭を下げてジンを見送ったミユは、ニコニコ笑いながらクルミに服を差し出した。
「お召し物をお持ちしました」
ジンが用意してくれたのだろう。
着替えの手伝いを丁重に断って、クルミはひとりで服を身に着ける。
パーティ用のドレスならともかく、普段着で手伝ってもらう事など何もない。
着替えを終えたクルミは、部屋の外で待機していたミユに案内されて部屋を移動する。
食事の支度はすでに調っているらしいが、少しミユに話を聞きたかった。