ビロードの口づけ 獣の森編
クルミの事を奥様と呼びながら、その夫であるジンを目の前で誘ったりする。
その感覚が理解できない。
それはジンにも同じようなところがある。
誘われたからだと言っていたが、力を得るためとはいえ夫のいる母と交わる事にためらいも罪悪感も抱いていなかった。
もしかしたら人間のクルミには理解できなくても、獣たちの習性としては普通の感覚なのかもしれない。
結月の事など獣社会の事をもう少し詳しく聞いてみたい。
なにしろ今後は、こちらの社会が拠点となるのだから。
ミユと共に今後自室となる部屋に入る。
部屋の中に備えられた設備や調度品について一通り説明を受けた後、クルミは話を聞きたい旨を伝えて、ミユをソファに促した。
言われるままにソファに腰を下ろしたミユは、少しかしこまった様子で背筋を伸ばした。
けれど濃い栗色の瞳は、好奇の光にキラキラしている。
ジンが言ったように好奇心旺盛な女の子なのだろう。
淡い栗色の髪を二つに分けて結び、頭の両脇に垂らしている。
付け根に結んだ白いリボンが愛らしい。