ビロードの口づけ 獣の森編


 働くための修行はそれで問題ないかもしれないが、結月の方は大丈夫なのだろうか。
 クルミと一緒に城に閉じこもっていては、男の求愛もあまり受けられないし、ましてや誘いに行くのはもっと難しい。

 人型になったジンをアピールだと勘違いしたミユは、子どもの産める成人女性なのだろう。
 気になって尋ねたら、今年は子どもを産まないと言う。


「え、産まなくてもいいの?」


 結月に女が子どもを産むのは、義務のような印象を受けていた。


「普通だとあまり大丈夫じゃないんですけどね。男の後ろ盾がなくなるので生活が厳しくなります。でも私はこうして働いていますから。それに奥様の側仕えという重要なお役目を頂いたばかりなのに、子育てで長い間仕事を離れたくありません」


 毅然として言い放つミユはかっこいい。
 ただの好奇心だけで働こうと思っているわけではないようだ。
 ジンが優秀だと言ったのも分かる気がする。

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