ビロードの口づけ 獣の森編
「でもジンのアピールは即決で受けるって言ってなかった?」
「だって、ジン様は最高の男ですし。別格ですよ。それくらいの男でなければ仕事の方を優先します」
ミユの男選びは、結構条件が厳しそうだ。
ミユのように働く女は少ないと聞いた。
子どもを産める女は男の後ろ盾が得られるが、産めない女や乳離れしたばかりの子ども、働けない年寄りはどうしているのだろう。
クルミの疑問に、ミユは首を傾げた。
「子どもは、ある意味大人みんなで育てているようなものです。でも他は、どうしているのか、私にはわかりません」
知識も生活の糧も、男女を問わず大人が子どもに与えるらしい。
ただし、子どもが”欲しい”と意思表示すれば。
稀に消極的な子どもにも与える、気のいい大人もいるが、稀である。
年寄りはいつの間にかいなくなっているらしい。
弱肉強食の世界では、弱いものは淘汰される運命なのだろう。