ビロードの口づけ 獣の森編
(6)
「私が付いていながら申し訳ありません!」
深々と頭を下げるミユを見下ろした後、ジンは反射的に出口へ向かった。
それを後ろから、ザキが腕を掴んで引き止めた。
「どこへ行く?」
「決まってるだろう。あいつを探しに行く。離せ!」
苛々した口調でまくし立て、ジンは腕を振りほどこうとする。
ザキは無表情のまま、そばにあった花瓶の花を引き抜き床に放った。
そしてジンの頭の上で花瓶を逆さに返す。
水が勢いよく頭の上から滴り落ちてメガネをずらした。
一瞬、呆然としたものの、ジンはすぐにザキの胸ぐらを掴んだ。
「何をする!」