ビロードの口づけ 獣の森編


「やけに詳しいな」

「カイト様のおこぼれを色々とご相伴にあずかってるからね。交わってはいないけど、愉しませてはあげてるよ。
私ももちろん愉しんでるけど」


 そう言ってライは妖艶な笑みを浮かべた。

 クルミの兄であるカイトは獣よけ香水の会社社長で、人社会ではライの主になる。

 次期領主でもあるカイトは、その身分や地位にあやかりたいと、資産家や貴族のご令嬢から引く手数多だ。

 ところが本人はクルミを婚約者と決めていたので、のらりくらりと躱し続けていた。
 それでもカイトに取り入ろうとする女たちが、秘書のライに声をかけてくるという。
 ライはそれをつまみ食いしているのだ。

 ライが女に対して調子がいい事は、カイトのまわりにいる女たちには知れ渡っている。
 彼女たちの本命はあくまでカイトで、女の扱いに長けているライには、ちやほやして愉しませてもらいたいだけのようだ。

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