ビロードの口づけ 獣の森編
「人の女はほどほどにしとかないと、いつか面倒な目に遭うぞ」
ライに任せておいては、いつまでも作業が進まないのでジンが自ら仕切る事にした。
「無駄話はそのくらいにして捜索を開始するぞ。ミユ、直前の経緯を詳しく話してくれ」
部屋の床には、箱から取り出された本や小物が無秩序に積み上げて並べられている。
部屋の一番奥には壁と一体化した書棚があった。
クルミはその棚に本を並べていたらしい。
書棚にはこれまで何も入っていなかった。
今はクルミの並べた本が三分の一くらい入っている。
クルミがこの部屋で生活するようになって間もない事もあり、部屋の中は殺風景だった。
人が身を隠せそうな場所は、ミユがすでに覗いてみたという。