ビロードの口づけ 獣の森編
「何者かが侵入したならテラスか」
ジンはライと共にテラスに出て辺りを見回す。
少し離れた場所に大きな木が立っていて、その枝がテラスの近くまで張り出していた。
しかしテラスまでは少し距離がある。
人にはまず飛び移る事は無理だろう。
獣なら、或いは可能な者がいるかもしれない。
ジンが周りを眺めている間、ライは手すりを調べていた。
侵入の形跡を探っているのだろう。
少しの間テラスをうろついていると、部屋の中からミユの悲鳴が聞こえた。
二人は慌てて部屋の中に戻る。
部屋の中から、ミユの姿が忽然と消えていた。