黒衣の天使



衝撃と、激痛。

女の手には太い桜の枝。

肩で息をしながらこっちを睨みつけ笑っていた。


「そんなに桜になりてーなら、血でも吸ってもらえよ!!好きなんだろ!?」



ドロリとした何かが頬を伝った。
額に触れると想像していた通り、血。


真っ赤なソレを見て抑えていた何かが胸の奥からせり上がってきた。


「桜、好き。けどね」


女の笑い声をかき消すほどの、けたましく、狂った笑い声をあげる。
怯んだ表情を見せた女と一気に距離をつめて、その長い髪を引っ張り地面に叩きつけた。


「だめなの。金色にこの華は似合わない」


叩きつけられ肺から押し上げられた空気で激しくむせる女から枝を取り上げ、高々と宙に振り上げる。


「アナタ、分かってるね。あたしたちに似合うのは赤」

「や、やめて…」

「真っ赤な」

「やめっ…!!」




「血の色」






ーードゴッ






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