ナクシタモノ
そう言う彼女にぽつりと答える。

「あいつ迎えに行ってる」
彼の声が静かな廊下に少し響く。

「そっか…」

寂しそうに彼女は呟く。

「ねぇ、あいつどこにいる?」

「…ユミなら多分教室だと思うよ?」

その言葉を聞くと彼は

「そう」

と、小さく呟いて体を廊下の奥に繋がる方に向け歩き出す。

「ありがと」

後ろの彼女に手をヒラヒラ振る。

「待って!」

彼女はそう言いながら彼に駆け寄った。

ギュッと制服の袖を掴んで彼女は口を開く。

「あ…のね、私前からケータくんのこと…」
「ごめん」

彼女の言葉を遮り彼は冷たく言う。

彼女に向き直り掴まれている手をそっと離す。

「俺の彼女はユミだから」
まっすぐ彼女の目を見る。

彼女の口が少し震える。

「でもっ二人はもう…」
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