ナクシタモノ
彼の言葉にその人物はビクンと体を揺らす。

ゆっくり彼の方を向き驚いた表情を浮かべる。

「ビックリしたぁ〜」

「お前気づかねーんだから」

彼女の口から漏れる言葉に彼は嫌みっぽく笑う。

「いつから居たの?」

小首を傾げる彼女に近づきながら彼は答えた。

「ちょっと前」

自分の席の床に這いつくばっている彼女の後ろの席に腰をおろした。

「お前なかなか来ないから来たんだけど」

不満そうな面もちの彼の顔をチラッと見た彼女はすぐ目を離す。

「先に帰ってもよかったのにぃ」

明るく笑う彼女は彼を見ない。

「帰りはいつも一緒って約束だろ?」

「…そーだったけ?」

ハハッと彼女の渇いた笑いが響く。

彼女は再び探し物を始めた。

彼はその様子を見つめている。
< 4 / 6 >

この作品をシェア

pagetop