IMITATION LOVE
「静香は反対したんだ。生後間もない君に、許婚を決めることに。
静香も僕とは政略結婚だったから、子供には縛りのない、幸せな結婚をしてほしいと思っていたみたいでね。」
当時を思い出したのか、夏目さんは切なそうに口を開く。
「…僕は、静香を幸せにしたいと思っていたし、もちろん世羅への静香の気持ちも尊重したかった。
……でも、当時の僕には、親父に逆らう権利を持ち合わせていなかったんだ。」
「…権利…?」
「そう。…親父には誰も逆らえない。
僕の母も滅多に、というか、ほとんど、口を挟むことはなかった。
静香の反対も虚しく、親父は世羅の婚約者を決めてきた。」