IMITATION LOVE
「それが答えだ。
今日の昼、大河内との会食が決まった。
…まあ、会食という名ばかりの見合いだ。
縁談は決まっているからな。」
…そのあとのことはよく覚えていない。
いつ祖父を見送ったのか。
いつ昨夜寝た部屋に戻ったのか。
とんでもないところに来てしまったと思ったのは、間違いではなかったみたい。
「…だから、ママは逃げ出したのね?」
返事が来るはずはないのに、私は脳裏に焼き付いた昨日の朝のママの笑顔に呼びかける。
でもね…ママ、私は逃げ出すわけにはいかないの。
昨日確認したら、家の通帳には入院に必要な額のお金はなかった。
…だから、夏目さんが、お父さんが代わりに払ってくれることになったから…。
ママを助けてくれたのに、私が逃げるわけに…いかないの……。