モルフェウスの誘惑 ※SS追加しました。
一ノ瀬の家に来ると
兄貴は俺をとてもかわいがってくれた
弟が出来たと長年の願いが叶ったと
とてもかわいがってくれた


父親も変わらず俺の事を大切にしてくれた
ただ、継母だけは違った


今の俺なら簡単に理解できる
妾の子なんか邪魔でしかない


けれど、まだ子供だった俺は継母に気に入られようと必死だった


勉強も兎に角、がんばった
迷惑かけないようなんだって自分で出来るようにした
そして、本当は母さんが死んで悲しかったけど
なるべく笑顔でいるようにした
この家を追い出されたくなかったんだ


けれど、継母はそんな俺に
もっと上の成績を取ってこいといい
子供には無理な仕事も手伝わされた
そして
師範代である継母に茶道も教え込まれ
少しでも手順を間違えるといつまでも正座させられた


それでも俺は必死にがんばった
頑張っていれば
いつか継母に気に入ってもらえると思ってたんだ


けれど、そんな日がくることはなかった
思い知らされた
ある時、継母が俺に言った一言で




二度と笑うなって




それで俺は漸く、気付いた
俺は継母にとって
邪魔でしかない存在なんだって
この人に俺が気に入って貰える日なんて
来ることないんだって
気付いたんだ


一ノ瀬の家に来て、一年が過ぎた頃だった




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