モルフェウスの誘惑 ※SS追加しました。
***

杜の所から帰ってくると、部屋の前に人影があった


よく見ると


真山だった


「な、何、してるんですかっ。困ります、帰ってください」


「随分とつれないねぇ、美雨。ああ、美雨と声に出して呼ぶのはいつぶりだろうね」


真山はかなり酒に酔っていた


「お約束したじゃないですか?もう、二度と会わないと…困ります」


美雨が鍵を出して開けようとすると、真山は美雨を抱き寄せた


酒の匂いに混じって、久しぶりに嗅いだ真山の香りに不覚にも美雨の心臓が跳ねた


「部屋に入れてくれ」


耳元で聞く真山の声に一瞬で顔が熱くなる
拒絶したいのに体が動かず美雨は戸惑っていた


「美雨、やり直そう。梓のことは何とかするから、なっ?だから、また元の俺たちに戻ろう」


耳元で言葉を続ける真山


恐らく、あの時
杜に抱かれていなければ、間違いなく今すぐ真山を部屋に招きいれただろう


けれど、
ゆっくりと真山の体を押し返した


美雨の中ではあのどしゃ降りの雨の日に
真山との関係は終わったのだ


「私たちはもう終わったんです。私たちは一緒にいちゃダメなんです。帰っていただけませんか?でないと、大声だしますよ」


美雨が落ち着いた声で言うと


「お前、匂いが変わったな。知らない香りがする。男ができたのか?だから、そんな事をいうんだろ?だけど俺を忘れるためなんだろ、美雨。だったら、もう止めろ。俺はお前の側にいてやるから…」


真山はそういうと美雨に唇を重ねようとした


「や、やめてください!」


咄嗟に美雨は思いきり真山を突き飛ばす
泥酔している真山は簡単にアパートの廊下に尻餅をつき倒れた


美雨はその隙に急いで鍵を開け、部屋の中へと入った


そして、ドアの鍵を締め、息を潜めながら外の様子を伺った


「美雨…開けろよぉ、中に入れてくれよぉ」


部屋の前で叫ぶ真山
すると、


「うるせぇぞ、近所迷惑だろが」


同じアパートの住人から声がした
先程からの騒ぎで頭にきたのだろう


暫くすると、足音が遠ざかっていくのがわかった。真山は立ち去ったようだった


美雨はその場にぺたんと座り込むと、震えている自分の体を抱きしめた


真山の懐かしい腕の感触
真山の低くてハスキーな声
真山がつけているスパイシーな大人の香り


美雨はまだまだ自分の中に真山が残っていた事に動揺していた


抱きしめられたとき
耳元で声を聞いたとき


美雨の体は反応していた
一瞬でもこのまま真山と…と思った自分に
戸惑っていた


漸く、立ち上がると
美雨はバスルームに入り、熱いシャワーでほのかに体に残る真山の香りを消した


美雨はいつまでも
いつまでも
熱いシャワーを浴びていた





















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