先輩~梨奈~
「リュウヤとちぃは、お互い好きで。
 リュウヤはちぃのこと本気で、
 つまり…
 二人は恋仲だったんだ」

「え…
 つ、つまり」

「あぁ。
 二人は付き合ってた」

う…嘘…。
で…
そのあと、ちぃちゃんと先輩は?

「ちぃの奴、チキンが大の好物で。
 リュウヤは付き合ってることを周りに知られないようにとも思ってて。
 その二つをかけて、ちぃのことをチキンって呼んでた」

「嘘…
 じゃあ、あたしがチキンって呼ばれてるのって」

「まあ、最後まで聞けって」

「わ、わかった」

「でも、二人で遊んでたときに、
 ちぃが死んだ」

え…
ちぃちゃんが?!
でも、確かに引っ越してきて妹のことなんて聞いたこと無い。

「それからリュウヤは、本当の意味で恋をしてない。
 女に告られて付き合って…
 それの繰り返しで」

そう言うと、リュウトが今度はちょっと微笑んで話し出した。

「でも最近、あいつめっちゃ楽しそうで。
 彼女の話、俺にすんのちぃのとき以来だし。
 で、チキンって呼んでるのもその影響なんじゃないかって」

先輩にそんな過去があったなんて…
初めて、知った。

驚愕?
唖然?
愕然?

…違う。
なんとも言い表せない感情が、あたしの身体を駆け巡る。

「でも、なんで先輩はあたしに言ってくれなかったんだろ」

「はっきりとしたことはわからないし、今言ったことも正しいかはわからない。
 でも、もし本当なら、妹のことを好きなんてキモいって思われるからとか?
 あいつ多分、梨奈のこと本気で。
 だから、わかってやってほしい。
 キモいとか、思わないで欲しいんだ」

「そんなっ。
 あたしがそんなこと、思うわけ無いじゃん。
 しかも、血が繋がってないなら余計そうだし。
 むしろあたし、それ聞いて先輩のこと今まで以上に好きになった。
 言い辛かったと思うけど、教えてくれてありがとう。
 リュウト」

「俺が今言ったこと、あんま周りに言いふらすなよ。
 過去は、あいつもフタをしてきたパンドラの箱なんだから」

「わかってる。
 じゃあ、また部活で」

「おうっっ。
 またな」

あたしはチャリのサドルに跨って一気にこぎ出した。
あしたはしたいことがある。
だから、朝早くおきなくちゃ。

それと、今日はチキンってあだ名をちょっと好きになった。











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