続・結婚白書Ⅱ 【手のひらの幸せ】
「円華 あれほど言ったでしょう! ほんとにもぉ
こんなになるまでどうして頑張るの
まったく誰に似たんでしょうね 似なくていいところが親に似るんだから」
お義母さんの小言に 円華の頬は膨らんだまま
いつもは 必ず口を挟むお義父さんが 今日はなぜか背中を丸めて
新聞を広げている
ははぁ 頑固譲りはお義父さんかぁ そう言えばそうだな
「お義母さん お世話になります 家にいるとじっとしてないと思うので
それに目を離すと仕事をしそうで」
「そうね この子のことだから ちょっと元気になると動き回るんでしょう
家にいたら要さんも落ち着かないわね
体調が良くなるまで預かるわ 要さん アナタも一緒にいらっしゃい
ここから通勤すればいいわ」
「いえ そこまでは迷惑をかけられませんから」
「迷惑じゃないわよ 娘夫婦と住んでみるのもいいじゃない
ねっ おとうさん」
新聞で顔は隠れているが うん と嬉しそうな声がした
「ちょっと待ってよ 私抜きで決めないで 着替えだって持ってきてないのよ
そう何日も泊まるわけにはいかないじゃない」
「病院の帰りに家に寄ったら 円華 なんとかかんとか理由をつけて
動かないと思ったんだ
着替えはこれからマンションに取りに行く
持ってきて欲しいものをこれにメモして」
「さすが円華の旦那様だわ アナタのことを良くわかってるわねぇ」
嫁さんの実家に頼るのもどうかと思ったが 男の沽券などと
気取ってる場合じゃない
思い切ってお義母さんに電話をして良かった
妙なところでお義母さんに感心されたが それも悪い気はしなかった
俺たちに散々言われて円華も諦めたのか ブツブツ言いながら
ペンとメモ用紙を受け取った