続・結婚白書Ⅱ 【手のひらの幸せ】

                      

家に帰って一緒に食事をする

話が尽きない日もあれば 黙って同じ部屋にいて どこかで相手の存在を感じる

そんな空間が とても心地よかった


互いに仕事を持っているから 先に帰った方が食事の支度をすると決めていた

今日は俺が早く帰って来たから 冷蔵庫にある材料で夕食を作る

円華 最近胃が痛いと言ってたなぁ……

胃に優しい食事にするか


俺達の結婚を 周りは予想以上に驚いた

そんなに驚くことだろうか

円華は 美人で気が利いて ちょっと心配性だけど 一緒にいて落ちつける

強いて言えば 少し年上だが それがどうしたというのか

男の方が10歳以上年上の夫婦なんてゴマンといるのに

嫁さんの方が上だと そんなに珍しいのだろうか

魚料理を作りながら ふと今朝の 円華の言葉を思い出した



「部署が替わったら忙しくなっちゃって 残業も多くなるわ

一緒に食事が出来ない日がふえるけど ごめんね」



俺より8歳年上の嫁さんは 仕事のポジションも収入もあっちの方が上

だけど それがなんだって言うんだ 当たり前じゃないか

俺は中途採用だし エンジニアといってもキャリアも浅い

技術手当なんて たかがしれている



「工藤 奥さんの尻に敷かれないように しっかり仕事をして 

早く出世しろよ」



こんな勝手なことを言う先輩もいる

そんなこと どうでもいいことさ

それより 円華の体が心配だった

仕事の重圧か 胃が痛いと しきりに口にするようになっていた

会社を休めと言いたいが 同じ会社で事情がわかっていると 

それも口に出来ない

今夜も 10時過ぎに帰宅した彼女は なんとかシャワーを浴びて 

少しばかり食事を口にして ソファーに倒れ込むように寝てしまった



「まどか まどか」


「うぅん……」



何度呼んでもカラ返事ばかり 動く気配がない

仕方なく 抱き上げてベッドに運ぶ


働き過ぎだよ……


背中に声を掛けたが 深い眠りについたのか 程なく寝息が聞こえてきた





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