続・結婚白書Ⅱ 【手のひらの幸せ】
「医務室まで円華を運んでくれた人がいるって聞いたんだけど……
俺からも お世話になりましたって 礼を言うよ」
円華の顔から さっと笑みが消えた
口をギュッと結んで思案顔のあと 素っ気無く言葉が返ってきた
「いいよ 私からちゃんとお礼を言っておく 要がそこまでしなくていいから」
「そう?」
「うん……」
「……世話になったのって誰?」
「他の工場から応援に来てる人 要は知らないんじゃないかな
5年位前にこっちにいたんだけど」
「そうなんだ……」
俺には関係ないことだからと言われたようだった
次の言葉が見つからず 黙々と箸を運んでいたら
円華が急に思い出したというように口を開いた
「玲子先生が快気祝いをしましょうって 要も一緒にって」
「おっ! いいねぇ で いつ?」
「来週金曜日はどうかな 坊や達が宿泊学習でいないから
ゆっくりできるみたい」
「その頃なら円華の体調も戻ってるんじゃないか 俺はいいよ
返事しといてよ」
「うん わかった」
これで話の流れが変わったな 一時はどうなるかと思ったぞ
ことによっては 初めての夫婦喧嘩に発展するところだったかもしれない
はぁ……疲れた……
箸でナスを挟みながら 俺は思わずため息をついていた