続・結婚白書Ⅱ 【手のひらの幸せ】

「工藤 今夜付き合わないか」



声を掛けてきたのは 同じ部署の山根さんだった



「今夜は ちょっと……」


「なんだ お前 結婚したら付き合いが悪いぞ 

円華さん 今夜も残業だろう?付き合えよ」



俺の嫁さんを名前で呼ぶ山根さんは 彼女の同期だと聞いている

加賀見さんや丸田さんも一緒だと言われ 断るに断れなくなった



『山根さん達に飲みに誘われた 遅くなるから』



円華にメールすると 不可解な返事が返ってきた



『わかった 山根君達が一緒なのね 覚悟して行った方がいいわよ』



”覚悟して行け”って どういうことだ?

その答えは ほどなくわかった





山根さんも加賀見さんも丸田さんも みんな同期入社だという

酒が入って昔話が始まった

黙って聞いていたが 加賀見さんが突然俺に聞いてきた



「工藤 お前 まどちゃんをどうやって口説いたんだ?」



はぁ? まどちゃんって 俺の嫁さんとどういう関係だったんだ?



「どうって 別に」


「別にって 何にも言わないで 彼女がなびくわけないだろう

どんな手を使ったんだよ 俺たちには聞く権利があるぞ」



聞く権利ってなんだ? 雲行きがおかしくなってきたぞ

横から丸田さんが口を挟む



「なんて言って口説いたんだよ」


「あの……好きですって」


「お前 たいしたヤツだな あのまどちゃんに ストレート勝負を掛けたのか 

それで 彼女どうした」


「なかなか信じてもらえなかったので……」


「そりゃそうだろう! で?」


「実力行使にでました」


「なんだとぉ 押し倒したのか?」


「いえ そこまでは……キスだけです」



とたんに 三人から 脇腹に鉄拳が飛んできた



「痛いじゃないですか!」


「当たり前だ あのまどちゃんを嫁さんにしたんだ これくらいガマンしろ!」



めちゃくちゃだ どうして俺がこんな目に遭わなきゃならないんだ

手荒い歓迎を受けながら 三人と円華の関係を考えた

もしかして この三人は円華を好きだったのか……



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