続・結婚白書Ⅱ 【手のひらの幸せ】
たまに吐き気がするらしいが その他つわりらしい症状はほとんどなく
円華は普通に仕事を続けていた
意外なことに 円華の体の変化に誰も気がつかない
「誰もオメデタ? って聞いてくれないの 不思議でしょう?
お腹だって少し膨らんできたのにね」
「着こんでるせいじゃないか? 薄着になればわかると思うけど」
ソファにゴロンと寝転がり 少しだけ目立つお腹を女房がさすっている
そばに行って一緒に腹に手を添えると 今までと違い張りのある肌の下に
固さを感じた
柔らかな肌ではない 手応えのある弾力のある肌になってきている
確かにこの中に俺達の子供がいるんだ……
手のひらに伝わる幸せを実感した
「山根さん 若林さんに 俺と円華のこと言ってなかったんですね」
俺は また先輩三人組と飲んでいた
歳も離れてるのに妙に気の合う三人と 以前にも増して飲む機会が増えていた
「まぁな 昔のことがあるからな まどちゃんのダンナが工藤だって知ったら
おまえがイジメられるんじゃないかって思ったんだ
若林はまどちゃんを泣かせたヤツだからなぁ
アイツにそんなことさせられるか!」
「そうだったんですか……ありがとうございます」
「バカ言え おまえをいたぶっていいのは俺達だけなんだよ」
そう言って山根さんは 俺の頭を抱え込んで拳をグリグリと押し付けた
やめてくださいよと言いながら 先輩達の心遣いが嬉しくて胸にジンときた