続・結婚白書Ⅱ 【手のひらの幸せ】
翌朝 体にまだ酒を残していたため コーヒーとトーストを半分だけ口にした
それに比べ食欲が増している円華は 俺の分のサラダまで取り上げて
黙々と食べている
「子どもは男の子がいい」
「そお? 私は女の子でもいいなぁ 一緒に買い物したり
料理を作ったり 着飾ったり可愛いじゃない」
「だけど女の子だといろいろ心配だし……
それに 娘さんと結婚させてくださいなんて 絶対言われたくないよ」
「やだ 要ったら もうそんな心配をしてるの?
そんなこと言って 自分だって私の父にそう言ったのよ」
「それは……だけど絶対イヤだ! 男の子を産んでくれよ」
「めちゃくちゃね 今更言ってもどうにもならないの
性別なんて もう決まってるのよ 女の子だったら諦めてね」
呆れ顔の女房は 二人分のサラダとスープを腹に入れ さっさと出勤準備に
取り掛かった
やっぱり男がいいなぁと まだブツブツと言っている俺を女房が睨みつける
いい加減にしなさい! と怒られながら会社の玄関に入ると いろんな人に
声を掛けられた
先輩達の仕業だった
円華の妊娠は会社中に広がっており その日 俺たちは行く先々で
手荒い祝福を受けることになった
「あはは……まどちゃん 先が思いやられるわね
あとで医務室に来てね いいものあげるから」
この人 女の子はイヤだって文句を言うのよ と愚痴をこぼしている円華に
社員食堂で会った玲子先生が なにかありげな顔でそう告げた
夕方 帰宅した俺の前に差し出された一枚の紙
”工藤家 産休育休計画書”
こりゃぁ 面白いことになってきたぞと 戸惑い顔の女房を横目に
俺はワクワクしてきた