続・結婚白書Ⅱ 【手のひらの幸せ】
円華は申し訳なさそうにしていたが それでも 一皿分は腹に入れたようだ
「仕事 忙しすぎるんじゃないか?食事も出来ないくらいなんて 体を壊すよ」
彼女の横に座って肩に手をまわすと 素直に体を預けてきた
「うん わかってる ありがとう
でも今頑張らなくちゃ 結婚したから手を抜いたなんて言われたくないの」
「明日は休みだし 朝ゆっくり寝てるといいよ
最近寝不足だろう? たまには充分睡眠を取って 体力を戻さないとな」
そんなことを言ったのは俺なのに ベッドに入ると円華の肌が恋しかった
この頃は 仕事の疲労もあり ベッドに入るとすぐに寝入ってしまう
夜をともに過ごすことが少なくなっていた
円華の体が疲れているとわかっているのに 今夜は肌に触れていたかった
俺のそんな気持ちがわかったのか 円華も拒まない
さっき聞いた 若林という名前が頭を掠める
そいつと彼女がどんな関係だったのか どうでもいいことだと
意識しないと思えば思うほど 執拗に円華を求めていた
「はぁ……ちょっとハードだったわね」
息が上がった声で 彼女が ようやく顔をもたげ
薄く笑った口元が 少しだけ文句を言う
長い髪が 薄っすらと汗をかいた肌に流れていた
胸を覆った髪を 指先でそっと掬い取る
「ごめん 疲れてるのに……」
”結婚したのは俺ですから”
先輩達に言った言葉を反芻していた
そうさ 円華と結婚したのは俺なんだ
自分に言い聞かせるように 何度も 何度も 頭の中で繰り返した