続・結婚白書Ⅱ 【手のひらの幸せ】


夏が過ぎ 鈴が一歳の誕生日を迎えた頃 円華の後輩の桐原さん一家が

遊びに来てくれた

去年の夏にも遊びに来てくれたのだが その後生まれた鈴とは初対面だった

そのとき ちょうど今の鈴くらいの赤ちゃんだった男の子は この夏で

二歳になっていて いたずら盛りで大変だと和音さんがこぼしていた

そして 和音さんの腕には この夏生まれた二人目の子どもが抱かれていた



「すずちゃんじゃなくて リンちゃんって呼んでるの? わぁ可愛い! 

ホント工藤さんにそっくりですね」


「女の子は可愛いですね ウチも次は女の子って思ってたのに 

また同じでガッカリですよ」


「もうひとり どうですか? 女の子 めちゃめちゃ可愛いですよ 

でも眉毛が俺に似ちゃって可哀想だけど」



俺の言葉に 桐原さん夫婦がそろって鈴の顔をのぞきこんだ

”眉毛 凛々しくて可愛いですよ” と笑いながら言っている

そうか やっぱり眉毛が濃いんだな 女の子に凛々しいってのはどうだろう

俺に似た娘が不憫になったが 誰がなんと言おうと俺にとっては可愛い娘なんだ

一歳の誕生日に歩き出し まだ危なげに部屋の中をトコトコと歩いている鈴を

抱き上げて 嫌がる娘に頬ずりをした



「毎日こんな調子なの 娘を持つ父親って子どもを溺愛するのね 

和音ちゃん 私は息子が欲しいわ」



俺の様子をため息混じりに見る女房は まだ膨らんでいない腹をさすって 

今度こそ男の子よと念じていた

円華のお腹には二人目の子どもがいる

来年の三月が予定日だとわかったばかりで 今回はつわりが辛そうだ 

鈴のときと違い あまり食べられないため体重を落とし体調が良くない日が

続いていたが 今日は親しい友人に会い 気分も良さそうだった

予定日通りなら同級生ねと 女二人は楽しそうで話は尽きない

子どもの相手を引き受けた男二人 世間話というほどでもないが 

ポツポツと話をする 

俺と桐原さんは接点がないと思っていたら 共通の友人がいて一気に話が

盛り上がった

こうして結婚後も家族で付き合うのもいいもんだ

新しい友人関係が広がり お互いに子どもの成長を見守っていくのだろう




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