続・結婚白書Ⅱ 【手のひらの幸せ】


しばらく会社を休んでいた円華は 体調がもどり職場に復帰した

鈴を預かってくれる保育園もみつかり 子どもを預ける不安もあったが 

広川のお義母さんの協力もあり なんとか生活のペースをつかんできた


”すずちゃんの面倒は俺が見る”


鈴の体調が悪く また俺達も休めないときは お義父さんが 自主休業だと

言って面倒を見てくれた

自営業の良さなんだって 商売そっちのけで鈴ちゃんの世話に忙しそうですよと

ベテランの従業員が苦笑まじりに教えてくれた 

そんな孫べったりのお義父さんは クリスマスには鈴の背丈ほどのぬいぐるみを

用意し 大きな包みとともに我が家にやってきた

あまりの大きさに鈴はビックリし 怖がって近づけないというハプニングも

あったが そのあと……

なんと ”じいじ” と鈴がしゃべったのだ

これには参った

”おとうさん” でもなく ”おかあさん” でもない 

最初に呼びかけたのが ”じいじ”

このときのお義父さんの喜びようはすごいもので 落ち込む俺を横目に 

会う人ごとに自慢し続けたらしい



  

「円華 これ見て」



年が明け 年賀状を手にした俺は 懐かしい名前を見つけた

差出人は若林さんだった


『昨年父親になりました 娘の可愛さに 残業もせず帰宅しています……』


写真つきの年賀状には 若林さんと その腕には若林さんに良く似た

女の赤ちゃんが抱かれていた

三ヶ月になったばかりだそうで 首がすわり可愛い盛りの様子が見えてくる



「赤ちゃん産まれたんだ この顔見てよ 目尻を下げちゃってもぉー 

前の顔からは想像できないわね」


「はは……本当だよ そう言えば若林さんって本社勤務になったんだろう? 

奥さんも大変だろうな」


「大丈夫よ 残業もせずに帰ってきてくれるご主人ですもの 

心配いらないわ……

あら ウチのチビちゃんと同級生ね」


「おっ そうだ へぇ~桐原さんちもそうだし面白いもんだね こういうの」


「そうね 年賀状をもらうたびに 子どもの成長も見られるのね」



二人目の子どもは男の子だとわかっていた

検診時に 担当医がエコー検査の折り ふと漏らしてしまったのだそうだ

”あっ” と言った医師の声に 何事かと心配した円華が問い詰めると

口を濁していた医師が 異常じゃなくて……しるしが見えますねぇ……と

言ったんだとか



「若林さんちの子も可愛いけど……ウチのリンの方が美人だな」


「もぉー」



またそんなこと言ってぇ と円華に呆れられたが 本当にそう思うんだから

仕方ないじゃないか

若林さんだって 俺達の年賀状を見ながら ウチの子の方が美人だと思ってるに

違いない

きっと そうさ……



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