続・結婚白書Ⅱ 【手のひらの幸せ】
そばで一人遊びをしていた鈴が急に泣き出し 俺の膝にのぼってきたので
抱き上げた
確かな重みが手に伝わってくる
子どもを二人抱き上げたら かなりの重さだろうな
だけど それは幸せの重さでもあるのかもしれない
「ねぇ 名前を考えてみたんだけど これどうかしら」
今度は円華が名前を決めるんだと張り切っている
背中をさすっているうちに寝てしまった鈴を抱えたまま 女房の差し出した
紙をのぞく
「この名前 いいよ 決まりだな」
「ふふん そうでしょう 良い名前でしょう」
自慢げな顔は 決めたばかりの名前を呼んで腹をさすっている
息子が生まれてきたら また賑やかになるのだろう
「鈴も寝ちゃったし コーヒーでも淹れようか」
「いいねぇ リンを布団に寝かせてくる」
「お願いね」
目立ってきた腹を大事そうに抱え 女房が台所へ向かう
颯爽と仕事をする姿もいいけれど お腹に子どもを抱えた姿もいいもんだ
かなり貫禄のついた円華の後姿を見ながら 自分のつかんだ幸せを噛みしめた
親子四人で海に行ける日はいつだろうか
当分は無理だろうが また行ける日が来るだろう
浜辺で遊ぶ子供達を想像しながら 鈴を抱えてゆっくりと立ち上がった
Fin