文学少女と秋の空
矢神は私と話したいと思っているのだろうが、
私は話したくないのだ。
だから、矢神を無視し続ける。
それに痺れを切らしたのか、
次にページを捲ろうとすれば、本を取り上げられた。
「ちょっと!」
そこでやっと矢神の顔を見る。
彼は、皆に向ける楽しそうな笑顔ではなく、少し拗ねたような怒ったような顔だった。
「そんなに本が好き?」
本を持ち上げて、私が手を伸ばしても取れない状況にして聞く矢神。
私は諦めて溜め息を吐く。
「本が好き。だから返して」
素直に返せば、更に不機嫌な顔になる。
自分で聞いたくせに、何がしたいのかわからない。
「俺は…秋が好き」
今度はそんな事を言う矢神。