文学少女と秋の空
「矢神が秋を好きなのは知ってる。いつも皆の前で言ってるじゃん…」
そう、矢神はいつからから「俺、秋が好き」と、皆の中心で言うようになった。
ブームなのか、ただ『秋』の季節が好きで、秋が訪れる事が嬉しいのか……
兎に角、いつもそんな事を大きな声で言う矢神の声は、同じ教室にいる私にも聞こえていた。
きょとんとした彼から本を奪い返し、また読書に戻る。
「俺、秋が好きだよ…」
「はいはい」
そんなやりとりがここ数日続いている。
毎日同じ事をして楽しいのか?
いや、放課後私の前に来る彼は、不機嫌だったり拗ねたようだったりして、
皆の前に居る時みたいに楽しそうではない。
では何故矢神は来るのか…