文学少女と秋の空
き
「秋、好き」
ある日、また矢神が言った言葉。
ちょうど本が読み終わったので、ポンっと閉じながら私は矢神を見た。
今日も拗ねた顔。
「そんなに秋が好きなら、折角今は秋なんだから外で存分に秋を味わったら良いでしょ?」
言い聞かせるように…回りくどく『どこか行け』と言う私を見て、
矢神はうなだれるように溜め息を吐いた。
「……全然わかってない…」
そんな風に言う矢神に首を傾げた。
「何が?」
「俺、お前が放課後ここに居るの知って…それから毎日来てるのに……」
「誰も頼んでないし!」
何が言いたいのかわからない矢神に、これ以上時間の無駄だと感じ、私はカバンを取り出して本を閉まった。