思春期の恋
「柊司の家まで、
ちょうど100歩なんだよね」
私がそう言うと、柊司はあははっと笑った。
「もう、100歩じゃないよ」
え・・・?
「100歩じゃないの?」
柊司は立ち止まった。
「もう、半分ぐらいの歩数で、
颯子の家まで行けるよ。
もう、颯子に守ってもらってばかりの、
小さい俺じゃない」
よくふたりで遊んでいた野原の前、
綺麗な夕焼けの中、
柊司はきっぱりとそう言って、
優しく微笑んだ。
そっか・・・もう、
柊司は、
あの頃よりもずっと、
体も、
心も、
大きくなっているんだ・・・
そしてまた、
歩幅を合わせて、
柊司の家へと歩き出した。
初めて手を繋いで、
歩幅を合わせて歩いた
あの日の100歩。
家と家の間はもう、
100歩じゃなくなっちゃったけど、
こうして、手を繋いで、
歩幅を合わせて、
100歩よりももっとたくさん
歩いていけるんだよね。
ずっと一緒に歩んでいきたい
柊司と一緒に。
「ただいまー」
「あら、颯ちゃん!すっごく久しぶりね!!
いらっしゃい!!
綺麗なお姉さんになっちゃって!」
「こんにちは」
「俺の部屋な」
「う・・うん。
おじゃまします」
「母ちゃん、
俺ら、付き合ってるから」
【思春期の恋】
ーーーfinーーー