◇◆近未来科学商品◆◇【CANDY】
真面目な優等生
好きな人
「今日の授業はここまで。問題集のP23〜25まで宿題」
と話し終わる前に「え〜」と批判を漏らす声があちらこちらで聞こえる。
「何か問題でもあるのか、荒井」
その冷たい声色にクラス全員の背筋がビシっと伸びる。
「……なんでもありません」
荒井君の弱々しい声が静まりかえった教室に溶けていく。
「そうか。なら、今日はここまでだ」
テキパキと教科書を揃え、指についたチョークの粉をパンパンと払い落とす先生の姿をあたしの瞳は引き寄せられるように眺めてた。
ピシッとしたスーツ姿。
今日はグレーだ。
それから寝癖のないふんわりとした髪。
メガネの奥に見える切れ長の瞳は氷のように冷たい。
シュッと首が細いのに、肩幅はがっしりとしていて、指先がとても綺麗。
不潔だとか、いい加減だとか、そんな言葉が似合わない人。
それが、高校3年の数学担当教員、菅山凌(スガヤマ シノグ)先生だ。
実は、かれこれ3年間、あたし、後藤ほのか(ゴトウ ホノカ)は菅山先生にお熱なのだ。