青空の神様
「ななみ、お父さんは、ここにはいないの、でも、気にしないで、もういいのよ。」          母は悲しそうな表情であたしの頭を撫でていた。父は、きっと警察に捕まってしまったのだ。あたしはとっさにそう思った。そして、またあたしのせいで父は苦しみ、悲しい思いをしている、きっと自分を責め、独りぼっちになっている。あたしは母に訴えた。   「お父さんを連れてきて、今ここに、今すぐ、早く連れてきて!早く!」
あたしは泣き声と怒りの混ざった声で、必死に叫び、ベットから起き上がった。母は、泣きながら震えていて、何もできないでいた。祖母は、イスに座ったまま下をうつむいて泣いている。あたしは、何か胸騒ぎがして、ベットから降りると、部屋を飛び出し廊下に出た。白い廊下と壁が長く続いていて、あたしは突き当たりの部屋にいた。あたしは白い光の続くその廊下を裸足のまま走った、羽が生えているかのように足は軽く、まわりの音も聞こえなかった。白い光の中に、大きく背の高い影が現われた。影はいくつかの影に連れられていて、こっちを見ていた。
「お父さんっ!!」    白い光が眩しかったけど、それは父だった、顔は見えなかったけど、父だった。あたしは父に駆けていき、父は手錠を掛けられた腕を上げ、あたしを胸へと引き寄せてくれた。あたしは、父に抱きついた。まわりの影は警察らしき人。分かっていた。父は捕まってしまった。あたしは叫んだ、
「お父さん、ごめんね、あたしが黙って、勝手にプールに入ったから、心配かけてごめんねっ!」     黒い影が何か動いた。そして、父はしっかり両手であたしを抱き締めて、頭を撫でてくれた。父も自由になった。
あたしと父は自由になった。白い光に包まれ、あたしと父の心が溶けだした。
父は夏の匂いがした。
あたしはその匂いに包まれ、嬉しくて泣いた。
「お父さん、ありがとう。」
父は声をあげて泣いていた。
その日、空は青くどこまでも続いていた
      完
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