青空の神様
あたしは泳げない。   あの人があたしをプールに連れてくる理由は、この夏休みの間に泳ぎを教えるためである。しかし、あたしとあの人の間柄は、親子ではあるが、そう思った事は生まれてこのかた、一度も感じた事はなく。むしろ、拒絶していた。人と人とは相性があるものだ。   あたしは、何とか空気を胸いっぱい吸い込み、弱々しい痩せた体を水に浮かべ、その瞬間、思い切り壁を蹴り泳ぎ出した。息継ぎはするものの、まったく酸素を得る事ができない、あたしは息継ぎの要領がつかめていない。よって、このプールの横幅である20mは、息がもたない。苦しい、苦しい、腕がもうあがらなくなってきた、ダメだ…。足をついてしまった、まだ向こう岸は手の届かないところで、波に揺られて見え隠れしていた。5秒ほどで、また胸いっぱい酸素を取り入れ、いそいで泳ぎだす。やっとの思いで岸に着くと、あの人は仁王立ちで腕を組んでこっちを見ている。 あたしを見て、めんどくさそうに手で、こっちに来いと示す。あたしは従うしかなく、少しでも、あの人と離れているこの場所にさようならを言うように、さっきより、やさしく蹴って泳ぎ出した。でも、すぐに息は苦しくなり、さっきより早めに足がついてしまった。仁王立ちの大きい影は、大きいシブキをあげなが、こっちに近づいて来た。思わず、二、三歩後ろに下がった。
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