青空の神様
仁王は、あたしの頭に大きい手を乗せた。思わず反射的に目をつむり、肩をすくめた。あたしは何故だろう水の中にいた。 キレイな水色の床に、上から差し込む太陽の光が優しく揺らめいて、不思議な模様を描いている。「なんてキレイなんだろう、気持ちいいなぁ」 …苦しい。息ができない。目の前にはあの人の足があり、かかとまでしっかり床についていて、親指の上に生えている毛が揺れている。 さっきまでのキレイな眺めはどこにもなく、水の冷たさが身に染みてきた。苦しいよ、息、苦しい。 手が離れた。 必死で顔を水面、上に出すと、あの人はあたしを見下ろし、あたしは息を吸い込むが、心臓はドクドクと弾けそうで、恐くて、苦しくて、まわりは見えなくて、顔にまとわりつく水を手で拭き取る余裕もなくて、でも… 手がまた、あたしの頭を水の中へ… 今はもう、さっきより酸素は胸に入ってない。今はもう、キレイな眺めはない。今はもう、泣いても涙はプールに吸い込まれ、流れ、漂い、消える、消える、消える あたしはもう苦しくない。お母さん、ごめんね。 もう三年生なのに、抱きしめてほしいよ。 はずかしいよね。