ハッピーマテリアル
満月の夜に
「行ってきまーす…」
誰の返事も無い、静まり返った玄関で私は独り言のように言った。
私は藤本愛生。
県内屈指の進学校、堀北高校の3年生。
受験生の私は先日、推薦入試が終わり、あと数日もすれば合否の発表がある。
「おはよう、愛生」
玄関の鍵を閉めてマンションのエレベーターに向かおうとした時、横から声を掛けられた。
「あ、康くん。おはよ」
『康くん』私がそう呼ぶのは、お隣さんで私の幼馴染の佐々木康祐。
康くんとは7歳も年が離れてるから、一人っ子の私には康くんはお兄ちゃんの様な存在。
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