ハッピーマテリアル
愛生たちの住むマンションは駅から徒歩5分以内の好立地な為、康祐は駅まで歩き電車通勤をしている。
マンションのエントランスで別れた愛生は、駐輪場に向かい自転車で学校へ行った。
学校の教室に入り、愛生は窓側の自分の席に着いた。
そのままふと外を見ると、サッカー部やテニス部が朝練をしていた。
ぼーっと外を眺めていると、携帯が鳴った。
「…もしもし」
<あー、愛生?おはよう。ごめんねぇ~、昨夜は仕事が片付かなくて帰れなかったわ>
「いいよ、別に。」
<今日は帰ったら話があるの。10時までには…帰れると思うから。>
「…分かった」
<じゃあね、また後で>
電話の相手は愛生の母親だった。
両親は、愛生が中学に入ったばかりに離婚した。
原因は父の浮気で、父は相手と一緒になるために家を出た。
母は愛生が生まれる前からバリバリのキャリアウーマンで、出版社でファッション誌の編集長をしている。
離婚した頃から、母はより一層仕事に打ち込むようになり、愛生と母の関係は希薄になっていた。