ハッピーマテリアル
【再婚】
その言葉を聞いた瞬間、愛生は頭の中が真っ白になった。
「相手の方はね…、広告代理店の、社長さんなんだけど…愛生の事も、快く受け入れてくれてて…3人で一緒に住む家も、用意してくれてるらしくて…」
「そ、っか…いいんじゃない?再婚でも何でも勝手にすれば?」
「愛生…!」
『愛生!』と母が呼んだのが薄らと聞こえたが、愛生は頭の中がパニックになって家を飛び出した。
「はぁ…っ、はぁ、はぁ…」
マンション8階から非常階段で無我夢中になって1階まで降り、気が付くとマンションから少し離れた公園に来ていた。
(再婚って…意味分かんない…。私、どうすればいいの?)
ベンチに座り、ようやく少し冷静になってきた愛生は、母の再婚について考えていた。
(私、再婚相手と一緒に住みたくない。お母さんだけその人の所へ行ったらいいじゃん)