隣の席の俺様ヤンキー【完】
「家の前まで送る。で、右と左どっちだよ」


魁一の苛立った声があたしの頭のてっぺんに降ってくる。


嫌いだって言ってたのに。


あたしのこと、絶対無理って。


それなのに、どうして偽りの恋人の相手にあたしを選んだりしたの?


どうして自分の手を怪我してまで、脚立から落ちたあたしを助けたの?


どうしてあたしを家まで送ってくれるの?


さっきだって……。


保健室で押し倒した後、今までみたいに無理矢理唇を奪われると思っていた。


彼お得意の気まぐれのキス。


あたしの意志とは関係のない一方的で愛のないキス。


だけど、彼は何もせずに溢れ出るあたしの涙を指で拭ってくれた。




「あたし、一人で帰れるから」


だから、お願い。


嫌いなら、もうあたしに構わないで。


これ以上優しくしたりしないで。


魁一の手をそっと解いて顔を持ち上げる。


すると、魁一は不機嫌そうな表情を崩すことなくこう言った。
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