隣の席の俺様ヤンキー【完】
「……お願い……。何も見なかったことにして帰って?」


無理矢理机から引き離されたあたしは、うつむいたまま喉の奥から言葉を絞り出す。


鼻の奥がツーンッと痛んでグッと唇を噛んだ。


いつもはあたしが何をしていても無関心な彼。


話しかけてくるのだって、彼の気まぐれ。


だから、今日も放っておいてくれればよかったのに。


どうして今日に限ってあたしに構うの……?


こんな姿……、桐山魁一にだけは絶対に見られなくなかったのに……。



「……――机のそれ、誰にやられた」


だけど、あたしのそんな願いもむなしく桐山魁一は押し殺した声でそう尋ねた。



「……」


「何とか言え。誰にやられたか聞いてんだよ」


「……」


「無視してんじゃねぇよ。つーか、顔上げろよ」


苛立った声の彼に耐えかねて、あたしは渋々顔を持ち上げた。

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