† of Human~人の怪異
アサギガワ
浅 葱 川を東から西、中心街方面へ向かいながら、和幸はぼやく。
土手を降りた先のほうに、少年達が草野球をしているのが見えた。
「上野さんさ、ちょっと俺につきまとい過ぎじゃね?」
「そんなことありません。これから先、アナタにはどんな覚醒が起こるかもわかりませんから。教会に所属しない〝九尾の末裔〟は、すべからく観察対象に置くのが教会の処置です。我慢してください」
「あ、そ」
返答は、ひどく事務的で、整然としていた。
さすが図書委員、とわけのわからないことに感心する。
自分はどうやら、全く気付かないうちに、ただ巻き込まれただけの存在ではなくなっていたらしい。
世の一切を達観する存在――〝九尾の末裔〟と呼ばれるなにかに、自分は該当する。
あの場に突然現れた修道服の男・一ツ橋にも、そう言われた。
「私達は同じ核から生まれた、†を飲む者なのですよ。あ、尻尾は生えませんがね」
その時、†という単語が聞き取れるようになっていたことには、さすがに驚いた。
その言葉の擁する、幾万にもいたりそうな意味の多さにも。
浅 葱 川を東から西、中心街方面へ向かいながら、和幸はぼやく。
土手を降りた先のほうに、少年達が草野球をしているのが見えた。
「上野さんさ、ちょっと俺につきまとい過ぎじゃね?」
「そんなことありません。これから先、アナタにはどんな覚醒が起こるかもわかりませんから。教会に所属しない〝九尾の末裔〟は、すべからく観察対象に置くのが教会の処置です。我慢してください」
「あ、そ」
返答は、ひどく事務的で、整然としていた。
さすが図書委員、とわけのわからないことに感心する。
自分はどうやら、全く気付かないうちに、ただ巻き込まれただけの存在ではなくなっていたらしい。
世の一切を達観する存在――〝九尾の末裔〟と呼ばれるなにかに、自分は該当する。
あの場に突然現れた修道服の男・一ツ橋にも、そう言われた。
「私達は同じ核から生まれた、†を飲む者なのですよ。あ、尻尾は生えませんがね」
その時、†という単語が聞き取れるようになっていたことには、さすがに驚いた。
その言葉の擁する、幾万にもいたりそうな意味の多さにも。