† of Human~人の怪異
和幸は、やれやれとかぶりを振る。

末裔といわれても、わからない。

自分はただ、『事実』を理解しただけに過ぎない。

あの時桜庭に言ったことも、理解した『事実』と思ったことを並べ立てただけだった。

上野のように剣を出すこともできなければ、桜庭のように蛇を操ることもできない。

にもかかわらず、つけられた呼び名が〝九尾の末裔〟。

(キュービのマツエーって、なんだよ、ったく)

頭の中で上手く漢字に変換できない、難解な存在が、自分。

わけがわからない。わからないが、仕方ないと、思う。

この鵜呑みが、上野曰く『達観』であるらしい。無自覚でありながら、しかし明確にそれを理解する。

それが達観。

〝九尾の末裔〟に見られる兆候らしいが……和幸には、なんとも面倒くさい。

二度目、溜め息が漏れた。

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