† of Human~人の怪異
「世界の一切は押し並べて……か」

「え? なにか?」

「あっ、いたいた、小名木くん、上野さん!」

と、訊ね返してくる上野に答える間もなく、背後から声がかかる。

桜庭紅蓮。

まるで芸能人のような名前のクラスメイトが、ぽてぽてと歩いてきていた。

学級委員だった彼は、しかし、今も学級委員である。

三人とも、文字通り学級崩壊したクラスから、となりのクラスへ編入された。

桜庭は、編入された先で学級委員の交代に乗り出し、その席を勝ち取ったのである。

もっとも、その闘争が起こることになった発端は、桜庭の意思より、編入先のクラスメイト達による、より優秀な人材の起用を訴える声だったが。

スラックスに青いシャツ。爽やかな格好をしている桜庭は、今やつぎはぎもまったくない手をひらひらさせながら言った。

「ちょっと面白い話を小耳に挟んだけど、いいかな。特に上野さん」

「私に、ですか。それとも教会に、ですか」

「正確には、後者かな。でも上野さんにも、小名木くんにも聞いてもらったほうがいい」

と、学級委員は笑う。
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