† of Human~人の怪異
見ていれば、どこまでも二人を達観してしまいそうである。

和幸は、だから言った。

「とっとと行って、とっととすまそう。俺も行くから」

ただこの申し出に、上野はやはりひどく、渋い顔をしていたが。

世界のうちにある一切は押し並べて運動しているのであって、あるいは減少し、あるいは増大している。

運動しているものは生きてもいる。

すなわち、世界とは同時に全体として見る時には不変であるが、その部分部分はことごとく変化する。

ただし、なにひとつ腐敗したり、消滅するわけではない。

そうした呼び名が人々を混乱させているのである。

命は誕生ではなく、感覚の生起でありし、また変化は死ではなく、忘却である。

このように万物は不死である。

質量も、命も、気息も、霊魂も英知もそうであって、あらゆる生き物はこれと結合してできている。

< 107 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop