† of Human~人の怪異
そうして苦笑したまま、男はまた和幸に向いた。

胸ポケットからなにかを取り出して、パッと和幸に見せつける。

「怪しいものじゃないよ、ほら、僕は刑事なんだ。で、君にちょーっと話を聞きたくてね」

見せられた警察手帳にはたしかに、彼の顔写真と、名前が記載されていた。

しかし名前は外国語な上、筆記体で書いてある。

なんと読んでいいかわからない。仕方なく顔と、『アル』という名前を和幸は覚えた。

「なんですか、聞きたいことって」

と質問し返した自分の声が、おもしろいほど小さかった。

周囲の野次馬が騒ぎ立てるから飲まれてしまっているのか、それとも自分の声が小さくなっているのか……

まあ、どちらでもいい。

アルという刑事は、手帳を開いてペンを構える――ことなく、訊いてきた。
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