† of Human~人の怪異
「はははっ、先生、みんなッ、逃げられるなら逃げてごらん!」

と、周囲が騒ぎ出すのを待っていたといわんばかりに、桜庭が両腕を大蛇にして、室内を蹂躙する。

クラスの生徒が数人、確実に、蛇の口内に消えた。

ばしゃり、と床に液体がぶち撒かれる音が聞こえた。

近場の席だった和幸は思わず――逃げるよりも、桜庭への体当たりをしようとした。

なぜかはわからない。

が、ただ、ばか笑いをあげている委員長を殴ってやらないと、気がすまなかった。

クラスメイトが、彼の両肩から生える大蛇の顎に噛み砕かれた怒り――そんな高尚な理由ではない。

ただ、彼の笑い声に、腹が立った。

その、なにかを見下したような笑いが、ひどく。

しかし、和幸が桜庭に体当たりを仕掛けるよりも、逆に、蛇に丸飲みされてしまうよりも早く、

「伏せてください!!」

「ふがっ!?」

横からダイブしてきた上野によって、一気に床へ叩きつけられた。

直後、頭上を大蛇の牙が通り過ぎ、間一髪である。
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