† of Human~人の怪異
桜庭は、クラス内を蹂躙することだけに、笑っている。

女生徒を蛇と化した腕で丸飲みにし、男子生徒をすり潰す。

教師は、いつのまにか床に転がっていた。

上半身だけの姿で。

教室の壁が、窓が、押し退けられた机が、現実が、日常が、みしみしめきめきと悲鳴をあげる。

「ひどい……」

そしてやおら、

「桜庭、紅蓮!!」

今日一日ずっとおかしかったもうひとり――上野楓が、立ち上がった。

くるりと、その声に桜庭が振り返る。

「なんだい、上野さん」

と、あまりに平凡な口調で。

気が付けば、動くものは桜庭と上野、そして和幸の三人だけで――

クラスメイト達は全員、どこかへ消えていた。

いや、どこかなどという曖昧な表現はよそう。

(委員長に、食われた)

床に伏せたまま、見やる。

委員長の傍らに、彼の肩にそのまま尾が繋がっている蛇が二匹、ぎょろりとした黄色い目で、こちらを見ている。

蛇は頭だけで、桜庭と同じほどの高さがある。

それが教室の中でぐるりととぐろを巻き、桜庭の肩に繋がっている。
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