† of Human~人の怪異
桜庭は、ふ、と空を見上げた。
わずかに雲の出ている宵闇に、膨らみかけた半月が浮かんでいる。
季節が秋なら芋名月と言いたいところだが……今は晩春だ。秋ではない。
小洒落たメガネのレンズに月明かりをほのかに反射させる超越者は、そして、跳んだ。
呼び動作もなく、タン、とアスファルトを蹴りつけて、高く高く、跳んだ。
着地点は、路地を形成している壁――もとい、すぐ真横の建物の、屋上。
ゆうに二十メートルはあろうかという高さを、彼は苦もなく跳び、足音も軽く着地していた。
彼は超越者。
それくらい、やってみたところで、驚きもない。
高みに立ち、ぐるりと周囲を見渡す。
大木市は、中心街とその外周を囲む住宅街で成り立っている。
住宅街に、そして妙案に浮かんだ級友が、当然いる。
桜庭は、蛇のように細めた眼で、ねとりと景色を眺め回した。
「さあ、て――君の家はどこかな……小名木くん」
大蛇の舌なめずりが、彼の右腕と左腕で、じゅるりと鳴った。
わずかに雲の出ている宵闇に、膨らみかけた半月が浮かんでいる。
季節が秋なら芋名月と言いたいところだが……今は晩春だ。秋ではない。
小洒落たメガネのレンズに月明かりをほのかに反射させる超越者は、そして、跳んだ。
呼び動作もなく、タン、とアスファルトを蹴りつけて、高く高く、跳んだ。
着地点は、路地を形成している壁――もとい、すぐ真横の建物の、屋上。
ゆうに二十メートルはあろうかという高さを、彼は苦もなく跳び、足音も軽く着地していた。
彼は超越者。
それくらい、やってみたところで、驚きもない。
高みに立ち、ぐるりと周囲を見渡す。
大木市は、中心街とその外周を囲む住宅街で成り立っている。
住宅街に、そして妙案に浮かんだ級友が、当然いる。
桜庭は、蛇のように細めた眼で、ねとりと景色を眺め回した。
「さあ、て――君の家はどこかな……小名木くん」
大蛇の舌なめずりが、彼の右腕と左腕で、じゅるりと鳴った。