† of Human~人の怪異
繕いを終えた和幸は、己の器用さに若干の自惚れを抱きながら――どっと畳へ仰向けになった。

なにを、自分はのんきに、しているのだろうか。

直したシャツを適当に投げ出し、和幸は脳裏に蘇ったあの場景に、眉をしかめる。

まぶたを閉じると、闇の中に、あの惨劇がありありと浮かび上がった。

慌てて、視界を取り戻す。

目を開けると当然、板張りの天井がそこにあって、安心した。

自分は、なにもすることができなかった。

なにかしなければいけない立場にあったわけではない。

しかし、桜庭に体当たりすることも、できなかった。

なにもできないまま、あの光景を、網膜に焼きつけさせられた。

それは、魂へ刻印されたかのように、まぶたの闇に浮かび上がる。

記憶。人間が一生、時間をピースにして管理する、情報。それが、和幸を圧迫する。
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