† of Human~人の怪異
しかし。

自分以外に、よっぽど生き残ったほうがよかった人間が、たくさんいる。

あの教室の中でも、それはそれは、自分よりもよっぽど。

たとえば、あの教師はたしか先月結婚したばかりだったはず。

幸せな家庭を築き、妻と仲を持ち、子供だって期待していただろう。にもかかわらず、死んだ。

自分が生き残った。

大木高校は。そもそも半端な学校ではない。そのため、たとえまだ第二学年であろうと、あのクラス内にも将来有望な人材はいた。

運動で全国ランクに入っている生徒、有名国立大学に現役合格できるだろう生徒、夢に向かい特別な努力を励んでいた生徒――

小名木和幸という人間以上に、社会に期待され、評価されるはずだった人材は、たくさんいた。

桜庭紅蓮も、同様、そのひとりである。
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