† of Human~人の怪異
「なんで、俺が生きてんだろな」

そんなことを思いながら。まぶたを閉じた時、

「悩める青少年、ってところですか」

「! なっ!?」

突然の声に、閉じたばかりのまぶたを、すぐに開いた。

視界を闇に委ねたのは、一秒あっただろうか。

たったそれだけの間に、さっきまではいなかった少女が、自分の視界に映り込んでいた。

慌てて、身を起こす。

「なんっ、上野さん、なっ、いつっ、なんで!? はあっ!?」

言いたいことは『なぜここにいるのか』というものだが、それに『いつの間に』だとか、『どうやって』だとかいう疑問が付与され、言葉が満足に並べられない。

突然の闖入者・上野楓は、図書委員らしいといったら偏見だが、メガネの奥の瞳を柔和に細めた。

「鍵が開いてましたよ、無用心ですね」

聞きたかったのは、そういうことではないのだが。

しかし、そこにいちいち反応できるほど、和幸の心に余裕はない。

彼女は、あの現場を生き残った、三分の一のひとり。

大蛇を切り伏せた、剣を持つ者。

和幸には上野楓が、桜庭紅蓮と同じ脅威的存在にしか、見えなかった。
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